Episode 1：消えた自転車と娘の捜索

静かな日曜の午後。自宅リビングでくつろいでいたその時、一本の電話が鳴った。
娘からだ。

「また……自転車、盗まれた……」

「え～！」。これで4回目。そう、もう4度も娘の愛車が盗まれたのだ。

毎回、鍵はしっかりかけていた。人通りの多い駐輪場に停めていた。それでも、盗まれてしまう。

娘は買い物を終え、スーパーから出た瞬間に異変に気づいた。あるはずの場所に自転車が、ない。泣きそうな表情で周囲を探す娘。スーパーの裏、公園の駐輪場、近くの路地、どこも空振りだった。

そして、娘と共に交番に向かい盗難届を出した。警察官は言った。「また盗まれたのか。でも、最近は自転車の盗難が増えてるんだよねぇ。」

自転車が盗まれるたびに盗難届を出す娘は、警察官と顔見知りとなってしまい、恥ずかしくて何も言わずにただ唇をかみ締めるだけだった。